第三章:心の距離

冬の寒さが深まる中、悠斗は自分の心の中にある変化を感じていた。美穂との会話から数日が経ち、彼の中で何かが少しずつ解けていくような感覚に包まれていた。

悠斗は放課後、図書館で過ごすことが多くなった。本に囲まれた静かな空間は、彼にとって心を落ち着かせる場所だった。そんなある日、図書館で意外な人物と出会う。

「悠斗、ここにいたんだね」

声の主は、彼のクラスメイトで、美穂の親友でもある彩香(あやか)だった。彩香は明るく社交的で、クラスのムードメーカー的な存在だ。

「あ、彩香。どうしたの?」

「ちょっと、あなたと話がしたくて。美穂のことで」

彩香は悠斗の隣に座り、真剣な表情で話し始めた。

「美穂、あなたのことをずっと気にしてたのよ。去年のことで、自分を責めてるみたいで...」

悠斗は驚き、同時に美穂の気持ちを知って少し胸が痛んだ。

「そうだったんだ...でも、もう大丈夫だよ。彩香、ありがとう」


その後の日々、悠斗は彩香とも徐々に話す機会が増え、彼女の明るさと親しみやすさに引かれていく自分を感じ始めていた。彩香はいつも悠斗に対して、自然体で接してくれた。彼女と話していると、心が軽くなるのを感じた。

一方で、悠斗は美穂とも時折話すようになっていた。しかし、二人の間には以前のような気まずさはなく、友達として自然に接することができていた。


ある日の放課後、悠斗は彩香と一緒に学校を出た。

「悠斗、今日は一緒に帰ろうよ」

「うん、いいよ」

二人は学校を出て、雪が降りしきる中を歩き始めた。

「ねえ、悠斗。君って、すごく優しいよね」

彩香の言葉に、悠斗は少し照れくさくなりながらも笑った。

「そうかな? 彩香こそ、いつも明るくて、みんなを引っ張っているよね」

彼らは笑い合いながら、雪の中を歩き続けた。その時、悠斗は自分の中で新しい感情が芽生えていることに気づき始めていた。彼の心は、再び温かな光に包まれ始めていたのだった。

第四章:変わりゆく季節と心

時間は静かに流れ、町は冬の寒さを深めていった。学校ではクリスマスに向けた準備が始まり、悠斗の心も少しずつ変化していた。彩香との関係は日に日に親密になり、彼女の存在は悠斗にとって大切なものになりつつあった。

一方で、美穂との関係も変わってきていた。以前のような緊張感はなくなり、友達としての暖かい関係が築かれていった。悠斗は美穂の笑顔を見るたびに、自分の気持ちが前に進んでいることを感じていた。


学校の放課後、悠斗は彩香と一緒にクリスマスの飾り付けを手伝っていた。

「悠斗、このリボンどう思う?」彩香がリボンを手に見せながら笑顔で尋ねる。

「いいね、その色、クリスマスらしくて。」

二人は飾り付けを進めながら、楽しく会話を交わした。その中で悠斗は、彩香への自分の感情をはっきりと認識するようになっていた。


ある日の放課後、悠斗はひとりで帰宅する途中、ふと空を見上げた。雪が降る中、街のイルミネーションがキラキラと輝いている。去年の今頃は、美穂への一途な想いで心がいっぱいだった。しかし今年は違った。彩香への新しい感情が、彼の心に温かい光を灯していた。

「人の気持ちって、こんなに変わるものなんだな...」

悠斗は自分の心の変化を感じながら、家に向かって歩き続けた。


クリスマスが近づくにつれ、悠斗は彩香に対する自分の感情について、より一層確信を深めていった。彩香の笑顔、彼女の声、一緒に過ごす時間が、悠斗にとってかけがえのないものになっていた。

「彩香、クリスマス、一緒に過ごさないか?」

悠斗はついに、彩香にその想いを伝える決心をした。彩香の答えはまだわからない。しかし、悠斗は自分の心に正直になることを選んだのだった。

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