第一章：淡い思い出の雪景色
冬の息吹が小さな町を静かに包み込む。積もる雪は、まるで時間を白く染め上げるかのよう。街の至る所には、クリスマスを彩るイルミネーションが、ひっそりとした夜に暖かな光を灯していた。
高校3年生の悠斗は、この雪景色を眺めながら学校への道を歩いていた。彼の黒髪は冬の冷たい空気に少し靡き、澄んだ瞳は遠くを見つめるように、どこか思索的だ。服装はシンプルだが、その中にも彼の落ち着いた性格が表れている。黒のダウンジャケットにジーンズ、そして手には暖かそうな手袋をはめている。
「やっぱり、この時期の雪は綺麗だな...」
彼の声は小さく、息と共に白い霧となって消えていく。昨年のクリスマスのことがふと頭をよぎる。彼が心を寄せていたあの子への告白、そしてその翌日の彼女の反応。あの日の記憶は、今も悠斗の心に淡く残っていた。
街の喧騒から少し離れた公園を通り抜けると、彼の高校が見えてくる。校門をくぐると、友達が手を振っている。
「おー、悠斗！寒い中、お疲れ！」
友達の明るい声に、悠斗は穏やかに微笑む。
「おはよう、寒いけど、雪のおかげで気分も新鮮だよ」
彼らは教室に向かいながら、些細な日常の話で盛り上がる。しかし、悠斗の心の奥底には、去年のクリスマスの思い出が静かに佇んでいた。それは、彼にとって甘く、そして苦い記憶なのだった。
学校の日常は変わらずに続くが、悠斗の心は少しずつ、新しい季節の変化に向かっていた。この冬、彼は何を見つけ、何を感じるのだろうか。彼の物語は、まだ始まったばかりだ。
第二章：去年のクリスマス
悠斗は今年で高校３年生になっていた。去年のクリスマスは、彼にとって忘れがたいものだった。その日、彼はクラスメートの美穂に告白していた。美穂は短めの髪に、くりくりとした大きな瞳を持つ、いつも周りを明るくするような女の子だった。
「美穂、実はずっと君のことが好きだったんだ」
雪が降る中、悠斗の告白は緊張と期待で震えていた。しかし、美穂の反応は予想外だった。
「ごめんなさい、悠斗。私、今、恋愛する気持ちになれないの」
その言葉は、悠斗の心に深く突き刺さった。それ以来、彼らの関係は少し距離を置くようになっていた。
悠斗は学校の廊下を歩いていると、美穂と目が合った。彼女は少し戸惑いながらも微笑み、悠斗は苦笑いを返すだけだった。
授業が終わり、悠斗はひとりで帰宅する途中、去年のクリスマスのことを思い出していた。
「あの時の僕は、本当に勇気を出して告白したんだよな...」
彼は自分自身に言い聞かせるようにつぶやいた。その時、後ろから声がした。
「悠斗、ちょっといい？」
振り返ると、そこには美穂が立っていた。彼女は少し緊張しているように見えた。
「どうしたの、美穂？」
「あのね、去年のこと...ちゃんと話しておきたくて」
二人は公園のベンチに腰を下ろし、話し始めた。美穂は悠斗に対して申し訳なさそうにしていた。
「ごめんね、あの時はちょっと...」
「いや、大丈夫だよ。僕もあれから時間が経って、少し気持ちが落ち着いたし」
悠斗は美穂の目を見て、心からそう言った。美穂は安堵の表情を浮かべた。
その日、悠斗は美穂と久しぶりに普通に話せて、心が少し軽くなったように感じた。帰宅する道すがら、雪が静かに舞い降りる中、彼は自分の心に変化が訪れていることを感じていた。
「去年のクリスマスは、僕にとって大切な一歩だったんだな」
彼はそっとつぶやき、冬の夜空に星が輝いているのを見上げた。それは、彼にとって新たな始まりの象徴のように思えた。
